数式の記法

数学と同様、Kawasemiにおいても、数式は、1つ、あるいは複数の値から、別の値を導き出すものです。例えば、単純な足し算である「1+2」という数式は、「1」と「2」から「3」という数値を導き出します。この数式はKawasemiにとって有効な数式であり、Kawasemiにこの数式を入力すれば「3」という値が表示されます。

ここで使われている「+」は加算を表す「演算子」です。この加算演算子は、演算子の左右に記述された2つの数値を足し上げることを指示します。誰に指示しているのかと言えば、勿論、実際に計算を行うKawasemiに対して指示しています。つまり、Kawasemiにとって演算子とは、自身に対する「命令」を意味します。この「命令」には、演算子以外に「関数」と呼ばれるものも存在します。例えば、Kawasemiにおいて余弦を求める関数である「COS」を使用した「COS(0)」という数式は、「1」という値を導き出します。このCOS関数はKawasemiに対して余弦を算出するよう指示します。

ただし、加算演算子がその左右に記述された値を演算対象とするのに対して、関数は括弧(かっこ)の中に記述された値を対象にして処理を行います。この括弧(かっこ)の中に記述された値のことを、関数の「引数(ひきすう)」と呼びます。括弧(かっこ)は必ず関数名の直後に記述しなければなりません。上の「COS(0)」という数式は、引数(ひきすう)である0[rad]の余弦を求めるよう、Kawasemiに指示しています。

COS 関数名 ( 0 引数 )

引数(ひきすう)の数は関数によって異なります。COS関数の場合、引数(ひきすう)の数が1つだけであるため単にその値を括弧(かっこ)の中に記述するだけで済みましたが、複数の引数(ひきすう)を必要とする関数の場合にはどのように引数(ひきすう)を記述すれは良いのでしょうか。例えば、角度を求める「ATAN2」という関数は2つの引数(ひきすう)を必要とします。この場合、「ATAN2(1,2)」というように記述します。複数の引数(ひきすう)を必要とする関数の引数(ひきすう)は、各引数(ひきすう)を「,」で区切って記述します。そして、それらの引数(ひきすう)は記述する順番が決められています。ATAN2関数の場合であれば、1つ目の引数(ひきすう)にX座標、2つ目の引数(ひきすう)にY座標を記述するよう定められています。もし、この順番を間違えてしまえば、当然、数式の計算結果は期待と異なる値に成ってしまいます。

ATAN2 関数名 ( 1 X , 2 Y )

中には引数(ひきすう)を1つも必要としない関数も存在します。例えば円周率を取得するためのPI関数がそれです。この場合は「PI()」のように括弧(かっこ)の中を空にします。引数(ひきすう)が無いからと言って括弧(かっこ)を省略することはできません。

関数の引数(ひきすう)として、数式を記述することが可能です。「COS(PI())」という数式は、COS関数の引数(ひきすう)として円周率を返す「PI()」という数式を記述しています。同様に、「1+COS(0)」のように、演算子の被演算項として数式を記述することができます。この場合の被演算項は「1」と「COS(0)」です。

数学同様、Kawasemiの数式でも、計算順序を示すために括弧(かっこ)を使用することができます。「4-(2+1)」という数式は、最初に「2+1」を計算して「3」という値を取得した後、その「3」を「4」から引くことを示します。「-」は、勿論(もちろん)、減算を表す演算子です。

以上の説明では、あたかも数式には演算子や関数が必要不可欠であるかのような印象を受けたかも知れませんが、実は値そのものも、それだけで数式と成り得ます。例えば、数式として「3」を指定すれば、その結果としての値は「3」となります。

値「3」を入力するだけであれば、値ボックスに直接その値を入力することもできます。数式ボックスに値を入力できるのに、何故(なぜ)、値ボックスにも入力が可能なのか、疑問を抱く人もいるかもしれません。実際の所、値ボックスに値を直接入力できなくても、それ程困ることはありません。違いがあるのは文字列を入力する場合です。「文字列」で説明されていますが、数式内に文字列を記述する場合は、文字列をダブルクォーテーション「"」で囲む必要があります。値ボックスに直接文字列を入力する場合、このダブルクォーテーションは必要ありません。そのため、文字列に限らず単なる値であれば、通常は、値ボックスに入力されることでしょう。

入力された数式の記述に文法的な誤りが存在する場合、値ボックスは空欄になりますが、ただ空欄になったのでは何が起きているのか皆目(かいもく)分からず、利用者は困惑することでしょう。そのため、このような場合にはその数式ボックスが赤く表示され、数式文字列の中で異常が検出された部分については特に強調表示されます。このように表示することで、利用者は数式に誤りが存在することと、その異常個所を知ることができます。

上の図の場合、セルA2とセルA4に入力された数式に文法的な誤りがあることが一目で分かります。セルA2の数式では、加算演算子の二項目が記述されておらず、又、セルA4の数式では引数(ひきすう)を1つしか指定できないはずのCOS関数に2つ目の引数(ひきすう)が指定されています。